市場調査という技術。一般人にはどのように理解されているのだろうか。
通常、企業がマーケティング活動を有効に進めるために、市場に関する様々な情報を収集することであると説明することが多い。しかし、この説明では、日本語の問題もあって、後段部分に力点が置かれて理解されがちである。つまり「市場」に関する情報を収集する技術であるという認識である。
しかし、本来的に、市場調査という技術は、前段部分に力点を置いて認識する必要があり、マーケティング活動を有効に進めるために必要な情報を収集することなのだ。
マーケティング活動とは、「売るための仕組み」全般をさす言葉であり、単に「買い手」である顧客や消費者の動向だけを理解したとしても不十分である。サービスや商品、価格設定、広告宣伝、販売促進、流通、営業、顧客情報管理などといった実に様々な情報を収集し分析することで、初めて「有効」にマーケティング活動を進めることができるのだ。
私は市場調査を生業としているが、この「市場」に対する調査が、どれだけの信頼性を持って分析することが可能なのかについて常々疑問を感じている。なぜなら、そこにはふたつの課題が横たわっているからだ。
ひとつは「市場」をどのように定義するかという課題。もうひとつはその「市場」を母集団とした正確な情報を、どうやって収集するかという課題である。
ある商品・サービスを展開する際、「市場」を定義する。例えば、ホンダが昨年売り出したCR-Z。開発当初の市場設定は20代、30代の若年世代。しかし、発売が始まってからの主たる購入者は50代、60代の団塊世代だった。つまり「市場」の定義自体を間違えても、製品が売れてしまったという現象。つまり市場調査など何の役にも立たなかったという結末である。
もうひとつ、もし20歳代・30歳代に「市場」を設定したとして、民間の一企業がどのようにサンプリングを行い、科学的に消費者動向を把握することができるのだろうか。
つまり、この二つの課題を抱えたまま実施された市場調査には、少なくとも高い信頼性は求められないという結論に至ってしまうのである。
こうしたよくわからない、あやふやな「市場」を相手にするよりも、既存顧客や社員・取引企業といった既にそこにある資源を活かした情報収集にこそ意味があるのではないだろうか。
既存顧客は、既に自社商品を使った経験があり、その良いところ・悪いところを、あなた以上に知っている可能性が高いのだ。
私自身、外資系ワインメーカーに勤務していた当時、自社のワインよりも他社のワインを飲んで研究することのほうが多かった。しかし、既存顧客は自社ワインを愛飲してくれており、その味や価格などに関する一過言を、少なくとも私よりは有していたはずなのである。また、メーカー社員として酒販店に売ることを業務としている私よりも、店先で実際に購入してくださる顧客を相手にしている酒販店社員のほうが、実はこのワインのよい面・悪い面を知っているはずなのである。
つまり、そこにある「情報」を的確に収集し分析すれば、より成果に直結しやすいはずなのだ。
市場調査という言葉の意味を問い直し、再度、正確に使う努力を関係者が積み重ねていくことが必要なのではないだろうか。
0 件のコメント:
コメントを投稿