2011年1月21日金曜日

市場調査とは何か

市場調査という技術。一般人にはどのように理解されているのだろうか。

通常、企業がマーケティング活動を有効に進めるために、市場に関する様々な情報を収集することであると説明することが多い。しかし、この説明では、日本語の問題もあって、後段部分に力点が置かれて理解されがちである。つまり「市場」に関する情報を収集する技術であるという認識である。

しかし、本来的に、市場調査という技術は、前段部分に力点を置いて認識する必要があり、マーケティング活動を有効に進めるために必要な情報を収集することなのだ。

マーケティング活動とは、「売るための仕組み」全般をさす言葉であり、単に「買い手」である顧客や消費者の動向だけを理解したとしても不十分である。サービスや商品、価格設定、広告宣伝、販売促進、流通、営業、顧客情報管理などといった実に様々な情報を収集し分析することで、初めて「有効」にマーケティング活動を進めることができるのだ。

私は市場調査を生業としているが、この「市場」に対する調査が、どれだけの信頼性を持って分析することが可能なのかについて常々疑問を感じている。なぜなら、そこにはふたつの課題が横たわっているからだ。

ひとつは「市場」をどのように定義するかという課題。もうひとつはその「市場」を母集団とした正確な情報を、どうやって収集するかという課題である。

ある商品・サービスを展開する際、「市場」を定義する。例えば、ホンダが昨年売り出したCR-Z。開発当初の市場設定は20代、30代の若年世代。しかし、発売が始まってからの主たる購入者は50代、60代の団塊世代だった。つまり「市場」の定義自体を間違えても、製品が売れてしまったという現象。つまり市場調査など何の役にも立たなかったという結末である。

もうひとつ、もし20歳代・30歳代に「市場」を設定したとして、民間の一企業がどのようにサンプリングを行い、科学的に消費者動向を把握することができるのだろうか。

つまり、この二つの課題を抱えたまま実施された市場調査には、少なくとも高い信頼性は求められないという結論に至ってしまうのである。

こうしたよくわからない、あやふやな「市場」を相手にするよりも、既存顧客や社員・取引企業といった既にそこにある資源を活かした情報収集にこそ意味があるのではないだろうか。

既存顧客は、既に自社商品を使った経験があり、その良いところ・悪いところを、あなた以上に知っている可能性が高いのだ。

私自身、外資系ワインメーカーに勤務していた当時、自社のワインよりも他社のワインを飲んで研究することのほうが多かった。しかし、既存顧客は自社ワインを愛飲してくれており、その味や価格などに関する一過言を、少なくとも私よりは有していたはずなのである。また、メーカー社員として酒販店に売ることを業務としている私よりも、店先で実際に購入してくださる顧客を相手にしている酒販店社員のほうが、実はこのワインのよい面・悪い面を知っているはずなのである。

つまり、そこにある「情報」を的確に収集し分析すれば、より成果に直結しやすいはずなのだ。
市場調査という言葉の意味を問い直し、再度、正確に使う努力を関係者が積み重ねていくことが必要なのではないだろうか。

2011年1月20日木曜日

営業担当者は会社そのものである

本日は賃貸不動産に関する市場調査。
調査目的はふたつ。ひとつは売る側が物件にどのような客付け判断をするのか。もうひとつは、管理業者の提供するサービス内容及びその価格動向について。

本日中に廻った不動産業者の中での特徴的な二社の対応を比較する。両社とも20代前半とおぼしき営業担当者。一方は男性、他方は女性が担当。

A社の女性担当者は、まず当方が求める2つの用件を的確に処理。しかも客付判断理由の解説はとても合理的だった。担当者の客観的な意見を排し、統計的傾向や事例を引用しながら、当該物件に関する判断を示してくれた。しかも、会社としての査定も実施し3日以内に回答するとの提示。とても好印象だった。

B社の男性担当者は、2つの要件のうち、管理サービスの内容及び価格動向など全く頭から消え去り、ひとつめの物件判断のみに終始。しかも、あくまでも個人的意見をだらだらと解説するだけでエビデンスを示すという姿勢は一ミリたりとも見られなかった。

顧客にとって、一番初めに応対する「営業担当者」イコール「企業そのものの印象」である。つまり、この場合、少なくともB社との取引などあり得ない。B社は、顧客から得られるであろう生涯利益を一瞬にして失ったのである。

これは何もB社の男性担当者の個人的問題ではない。企業体として、従業員をどのように教育し、顧客対応をマネジメントしているかの問題である。確かB社は、昨年、親会社が会社更生法を申請し、現在、スポンサー企業のもと経営再建中の企業であり、優秀な人材は会社内に残っていないのだろう。

他方でA社は、顧客不満足度調査の導入を公言し、顧客視点に立った経営を標榜している企業体である。もちろんこの取り組みだけが、この結果を生み出しているわけではない。しかし、少なくとも経営層が「顧客を重要視する」と公に打ち出したことが、さまざまな波及効果を生んでいることは確かだろう。

顧客の要望にこたえるために「顧客の声を訊く」。この姿勢を取り続ければ、顧客は必ず利益をもたらしてくれるはずだ。

2011年1月19日水曜日

顧客満足度の低い役所

先日開催した講演会で必要な資料作成のため、高松市役所HPを訪問。
しかし肝心な情報が非掲載だったため、メールにて問い合わせをした。

問い合わせ内容は住民基本台帳の閲覧方法及び閲覧料金について。
グーグル等で検索すれば、多くの市町村が当然のように掲載している情報。
しかし残念ながら、高松市役所HPには掲載されていなかった。

問い合わせをしたのが1月13日木曜日。
回答が届いたのが1月18日火曜日。
つまり4営業日もかかって、この2つの質問に回答しているのである。

しかも、こうした質問がくることなど住民基本台帳を公開している以上、普通に想定可能である。だからこそ、他の市町村はHPに様式がアップロードされ料金が明示されているのだ。

まず回答に4日もかかるということ自体、顧客(市民)対応の悪さが目立つ。しかも我々は、市役所職員がこうした単純な回答をメールで回答する時間に税金を支払っているのだ。もし私が市職員であれば、HPに掲載するように手配すると一言添えて、それを実行するだろう。それこそが業務の効率化だし、市民サービスの向上だろう。

これらを批判することは簡単だ。しかしこれをどう改善していけばいいのか。市役所職員がコスト意識を持つこと、サービスが何たるかを認識すること、税収によって自分たちは働いているということを、無意識的に理解し、日々の業務に取り組める改革とはどうあるべきなのだろうか。

友人である市役所職員は、行財政改革での問題の根幹は高齢者の多さにあると平然と言ってのけた。しかし、そもそも行政を存立させる必要などない。住民がいるからこそ、行政が存立できるのだ。行財政が立ち行かない理由が自分たちにあるということをどのように認識すべきなのか。

そこが市役所の顧客満足度を向上させる唯一で最大の問いかもしれない。

2011年1月18日火曜日

出版社の生き残り

昨日、某出版社の担当者が来訪。
現在書き溜めている営業技術に関する著述の書籍化について。

まず出版事情をほとんど知らないので、いろいろと教えを乞うた。
出版業界はかなりしんどい。電子書籍への取り組みをどうするかなど。
実際、自社企画出版でも持ち込み企画でもヒット率はほとんど同じ。
しかも出版物の半数が初版で終了。つまり赤字で終わる状態にあるのだそうだ。

しかしこの出版社は社史を中核事業としているとのこと。しかもビジネス書が現在の出版事業の主たる内容であるらしい。そこで、社史でお付き合いのある企業に、どんな「書籍」とかかわりのある仕事があるか聞き取り調査を行ったらどうかと提案した。

社史を編纂する企業は比較的安定経営ができている会社である。だからこそ社員教育なども地道に行っているはずだ。この社員教育。意外に適当な研修制度は存在していない。どれも通り一遍。その会社に必要な研修を提案できる企業はあまりないのだ。

だからこそ、聞き取り調査をすれば、こうした社員研修で必要としている技術論の全体像を理解することができるし、しかもビジネス書出版社なのだから、関連する技術のエキスパートを集めて教本を執筆してもらえば、かなり需要の見込める「書籍」が作れるのではないかと提案したのだ。

しかし、担当者から帰ってきた言葉は「それは日経やPHPがすでにやってます」という回答。もちろんそんなことくらいある程度分かっている。しかし、作ってもこれらの企画が売れていないのは、顧客の声を聴かず、こんな情報が必要だろうと制作サイドだけで考えた代物だからなのだ。

既存事業の見直しにしろ、新規事業への取り組みにしろ、少なくともチャネルを持っている顧客の不満や不安を捉えることから始まるのだ。そうした意味で、社史編纂で携わっているパートナー企業群を保有しているだけでも、他社とは差別化できる要素を持っているのである。

しかし、現実的に考える対応策が「電子書籍化」などという小手先の対応を考えている出版社をパートナー企業として、弊社の成長戦略を担ってもらえるとは思えない。企業や営業担当者は「できない理由」を考えるのではなく、「やるためにはどうすればいいのか」を考えることこそが、本当のイノベーションを生み出すのではないだろうか。

2011年1月17日月曜日

データ分析だけではわからないこと

本日の日経新聞一面。「企業 強さの条件」にスーパー最大手のイオンが出店する小型スーパー「まいばすけっと」に関する記事が掲載されている。

この「まいばすけっと」、地価の高い都心部に立地しながら郊外型スーパー並みに価格を抑え、コンビニに対抗するとのこと。それだけに売れ筋は外せないと続く。

商品をレジで打ち込んだ瞬間にデータが物流センターに飛び、需要予測も加味してメーカーや問屋に自動発注するシステムを全面導入。消費者動向に目を凝らし、店舗の運営コストを下げるという。

私はこの試みは近々失敗すると予想する。なぜか。それはこの販売方式が「商品(モノ)」をベースに運営構想が立案されている点だ。そもそも基盤となるデータは、店舗が商品を「仕入れて」「並べて」「売れて」初めて数値化される。しかもその売上数値は「仕入れ数」が上限である。つまりデータを収集する基点からして制限が存在しているのだ。

本来、データ分析に必要な視点とは、消費者の買い物の結果に注目することではない。買い物の結果とは、顧客の「ニーズ」を満たすための「ウォンツ」を提供したに過ぎない。その「ウォンツ」をいくら詳細に分析したとしても、その結果に意味はない。

そもそものニーズを明らかにすることこそが、消費者動向に目を凝らすということであるはずなのだが、イオンも日経新聞社の記者もこのあたりのことを斟酌することなく平然と語っている(記事にしている)。

経営者のビジョンが世の中の方向からずれていると、そこで働く社員は困難を強いられる。
大手企業であれば失敗は許されるが、中小企業はそんな失敗は許されない。
中小企業の経営者の皆様には、データの意味をよく理解して分析してもらいたい。

2011年1月16日日曜日

中小メーカーが市場調査で難局打破

中小企業基盤整備機構が提供する中小企業ニュースに、都内中小メーカーが取り組む市場調査に関する記事が掲載されている。

社員数10人の都内メーカーが独自の市場調査をおこない、新製品を開発、新規市場に相次ぎ参入しているという話。社員が通常業務の合間に、一般消費者に聞き込みを行い、製品開発や価格設定に生かすのが特徴。

東和サプライ/灰皿の煙排除で新製品。
「灰皿から出続ける煙を何とかできないか」。通信ケーブルの延線工事用装置の製造・販売を手掛ける同社は社員10人。社長・社員が手分けして、高速道路のサービスエリアや道の駅など数百か所を回り、喫煙・非喫煙者や灰皿の管理責任者に調査を実施。

調査結果から喫煙所では煙に対する苦情以外に、喫煙者が増える夕方の時間帯と、清掃担当者がトイレ掃除など別の業務に追われる時間帯が重なり、灰皿の掃除にまで手が回らないなどの構造的な問題点が明らかになった。

開発は煙の排除に力を注ぎ、自動消火システムを考案。吸い殻と水を分離する二重構造にし、清掃の負担を軽減した。年内の製品化を目指して開発を進め、すでに地域金融機関から数台を受注した。

チバダイス/バイク用靴底滑りどめ開発
歯車の金型などを手掛ける葛飾区のチバダイスは、独自技術を生かせる市場の調査と製品開発に乗り出している。

調査対象は一般のバイク利用者約200人。調査結果から、スクーターに取り付けて足場を固定するステップバーの開発に的を絞った。バイク利用者は体の前方だけでなく、後方で足をステップバーに乗せたい需要があることがわかり、前後で利用できる商品を開発。製品には靴底の滑り止めとして、金属丸棒表面に独自加工技術を生かしている。販路はバイク部品の専門店などを独自に開拓し、これまで約50個の販売実績がある。

記事は「新製品開発に活路を求める中小企業の課題はマーケティング力。社員数十人規模で市場調査の専門部隊を立ち上げるのは難しいが、社員自らが一般消費者の意見をコツコツ集め、製品開発につなげる動きが出てきた。この草の根的な調査・製品開発が、中小企業が国内でモノづくりを拡充するヒントを与えてくれそうだ」と締めくくっている。

この記事のまとめにある「社員自らが一般消費者の意見をコツコツ集め」jという点が、もっとも重油小田。難局の打破とは、売る(セリング)の立場から、聴く(マーケティング)の立場への大転換なのである。

これまで中小企業は、右肩上がりの成長市場のなか、技術力を中心に企業の成長を支えてきた。そこのは「いいものを作れば売れる」という流れがあった。しかし、現代社会にはすでにものが溢れており、消費者はたとえいいものであっても買う必要がない。それを買ってもらうためには、まさに消費者が抱えている「不」のたねを見つけて、それを解決するソリューションを提供することしかないのだ。

『社員が顧客の意見に耳を傾ける』
この積み重ねだけが、難局にある中小企業が勝ち残るための道である。