2010年12月23日木曜日

本当にビジネスに役立つ著書とは

ベストセラーと呼ばれる本が、自分に役立つかどうかは無関係。
それを代表するのが、2010年に売れた本第一位の『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』、岩崎夏海、ダイヤモンド社。

話題の著書だっただけに読了。
近年、この本同様、小説仕立てでビジネスノウハウを提供するタイプの著書が増えている。TOC理論の『ザ・ゴール』や意思決定に必要な会計知識を伝える『「値引きして売れるなら捨てるよりマシ」は本当か?』などがその系統だ。

それぞれの著書には、実践的なノウハウが提供されていて納得できる。
ちなみに、この『もしドラ』は、ダイヤモンド社のドラッカー担当が「ドラッカー関連本としては、いちばん完成度が高い」と絶賛し、かつ長年ドラッカーの翻訳を務めてきた上田惇生さんが推薦するという一冊だそうだ。しかし、この『もしドラ』には実践的なノウハウは詰まっていない。
読後感は「全くつまらない空想小説」なのだ。

事実、著者である岩崎夏海はこう述べている。
「実は、女子高生ありきでした。ドラッカーも高校野球も、後から付け加えたにすぎません。主人公が女子高生のドラマだとアニメやコミックにしやすい。そうなれば、また本が売れます」と。つまり、彼にとっては、この『もしドラ』はドラッカーの経営理論に立脚しているわけでなく、300万部の著作を売ることを前提に組み立てられた商品に過ぎないのだ。

この著書を読んで、ドラッカーを理解しているつもりならそれは誤解だ。
また、この著書を読んで経営を理解したつもりだとすればそれは大間違いだ。

この著書の中で、甲子園行きが決まった高校生が、記者の質問に対して逆質問する場面が描かれている。「あなたがたは何を我々に望んでいるのか教えてほしい」と。顧客ニーズを捉えたい企業の姿を投影しているつもりで書いた場面であろう。
しかし、こんな顧客任せの商品やサービスなどが、この世に存在するのだろうか。
この商品・サービスがあったら、こんな人たちの役に立てるはず、という気持ちが企業の根幹にある。
その気持ちを単なる独りよがりに終わらせることなく、本当に役立つ商品・サービスに育て上げる行為こそが「顧客の声を聴く」という作業なのだ。

つまりこの著者は、ドラッカーの言いたかった本質、あるいは企業や企業人が本来的に欲している「顧客ニーズ」のとらえ方を間違えた意味で「小説化」しているのだ。

本というのは、時に多くの知識と経験をたった2000円弱の投資で体感させてくれる。
しかし一方で、それを批判する目を持たなければ、このような戦略にまんまとはまってしまうのだ。

市場調査と顧客分析のNNW JAPAN RESEARCH & CONSULTING

0 件のコメント:

コメントを投稿