とある医療関連製品メーカーの営業担当者。
彼は今春から、新設された営業企画室本部付に抜擢された。
それはある画期的な営業方法を思いついたからだ。
通常、医療医薬関連製品メーカーの営業担当者は、卸業者などと協力して病院への製品売り込みに精進する。当然、交渉相手は病院長、医師、薬剤部など、購買決定権をもつ人たちとなる。
しかし彼はなぜかゼネコンに営業に回るという方法をとって、大きな成功を手にしたのだ。
現在、病院には、医療機能評価機構による「病院機能評価」を受け、差別化を図ろうとする動きがある。もちろん評価制度自体に、根本的な問題も多く導入自体はまだあまり進んでいないが(病院全体の3割程度)、少なくとも客観的に機能を評価され、標準をクリアした病院経営を目指している。
こうした機能を有した病院を志向すれば、当然、ハード面からのアプローチも重要となる。
そこで、この評価機構の新しいヴァージョン導入に合わせて、その建設を請け負うゼネコンを対象に、「病院機能評価」とは何か?という知恵を授け、受注活動に役立ててもらおうという手法である。
もちろん疑問もある。
たとえこのレクチャーを受けたゼネコンが晴れて案件受注を獲得したとしても、必ずしも彼が所属する医療関連製品メーカーに、設備機器一式の発注が入るわけではないじゃないかという点である。
しかし、彼はこう考えた。普通に決定権者へアプローチしていても、病院機能評価導入を促すことはできない。もし川上でその概念を理解してもらい、「予算確保」が出来れば、当然他社との競争にはなるが、この予算があるかないかでは、可能性が全く違ってくるはずだ…と。
つまり、予算さえ事前に確保されてさえいれば、あとは競争力がある製品は確実に売れると考えたのである。
営業の仕事とは、「顧客のニーズを探り、それに沿った製品を提供することである」と認識することもできる。しかし、顧客ニーズを「育てる」ことも営業の重要な仕事である。
それは単に「育てる」だけではなく、収益につながる活動として「育てる」ことこそが、これからの営業に求められる資質ではないだろうか。
この活動は、結果的に病院の評価を高め、顧客の競争力自体を向上させている。
つまり、彼は、顧客がその顧客に評価され繁栄すれば、自社もまた繁栄するという、急がば回れを実践しているのである。
こうした「創造的営業」を目指すことが、今後のトレンドになれば、営業ももっとクリエイティブな仕事だと認識してもらえるのだと思う。
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